個人的な好みではカボチャの花の詰め物は昨年投稿したサンレモ風のじゃがいも、バジリコ、パルメザンを詰めたものが一番美味しいと思う。カボチャの花の香りが生きるから。
https://note.com/kajorica/n/n370c0992ae99?magazine_key=mb27aef3638ae
でもイタリアでカボチャの花の詰め物と言うと、このモッツァレッラチーズとオイル漬けアンチョビの方が一般的。こちらの方がお酒のつまみには適していて、手間も掛かりません。
以前クネアツの大勢の会食でサンレモ風カボチャの花の詰め物を作って大好評だった後、ナンダが珍しく自宅の夕食に招待してくれたと思ったら「こういうのもあるのよ、知ってる?」と「どうだ!」と言わんばかりにモッツァレッラチーズとオイル漬けアンチョビが具のカボチャの花の詰め物が出てきた。
もちろん知っていた。
最初に読んだカボチャの花の詰め物のレシピは、ステファニア・ジャンノッティのレシピ集「粉砂糖」に載っていたものでモッツァレッラチーズとオイル漬けアンチョビが具。彼女が彼、後の夫を誘惑するために使った「勝負料理」だった。
ステファニアの場合は19世紀の有名な美食家アルトゥージの衣をつけて揚げる。
アルトゥージの衣の詳細ははこちらのレシピをご覧ください。本当のアルトゥージの衣はワインではなくコニャックを使います。
https://cucina-kajorica.blogspot.com/2024/05/blog-post.html
揚げ物はキッチンが汚れたり油の後処理などが気が重いので、昔コンチェッタを呼んだ時にオーブンで作ってみたことがある。が、カボチャの花から溶けたモッツァレッラチーズが流れ出し、悲惨なものになった。
ファションデザイナーで一見生活感のないコンチェッタは見かけによらず古風で家事が得意。とても残念な仕上がりのカボチャの花を見て「まったくあなたは。。。」と呆れていた。
だからオーブンで焼くには今回のパオラRの様にパン粉を混ぜ込みながら少なめにモッツァレッラチーズを入れるのと、焼き過ぎない様にするのがコツだと思う。
パオラRの話の続きはレシピの後に。今日はパオラRの高年の恋の話。
料理の完成写真を撮り忘れたので、工程写真はパオラRの作った物と、私の作った写真が混ざります。
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<材料> 3-4人分
・かぼちゃの花 12個
・モッツァレッラチーズ 250g
・オイル漬けアンチョビ半身 12枚
・パン粉 適量
・オリーブオイル 適量
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<作り方>
1・かぼちゃの花は洗い、花芯を取っておきます。
2・かぼちゃの花の半分か三分の一程度に詰める感じでモッツァレッラチーズをちぎり、オイル漬けアンチョビ一切れとパン粉をまぶしながら、かぼちゃの花に詰め込みます。
3・2に軽くオリーブオイルを塗し、更にパン粉をまぶして花の口をきっちり閉じます。
4・オーブン皿に並べ、送風モードがある場合で180度で約20分焼きます。
*送風モードというのはオーブン内の温度が均等になるよう送風装置をオンにして焼く方法。
なのでオーブンは事前に温めずに入れて今回は20分焼き、ちょうど良い感じでした。
5・焼き上がり、もしもチーズが外に少し流れ出してしまったら、ゴムベラで形を整え、数分後にサーブします。
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パオラRの高年の恋(実話です)
パオラRは若い頃に結婚、そして間も無く離婚した。後に22歳年上のインテリと再婚し数十年連れ添い60代後半で未亡人になった。夫は北イタリアのピエモンテ州出身のインテリで、あまり社交的ではなかったと聞く。私がパオラRに知りあったのは未亡人になってからだ。
クネアツで近所の人と食事をしていた時、ミラノ工科大学のフェデリコ教授に「同僚で誰かいい人がいたら紹介してくれないかしら?」と尋ねていた。半分本気、半分冗談程度に聞こえた。フェデリコ教授は「教授の中で良い人を見つけるのは難しい。」と躱していた。
それから暫くして、年の近い恋人が出来た。
南イタリアのアブルッツォ州出身のアルフォンソは、それまで長くローマに住んでいて、やはり長年連れ添った妻を亡くしたエンジニアだった。
少しして、アルフォンソはミラノのパオラRの家に引っ越してきた。
パオラRの友達は皆、穏やかでオープンなアルフォンソを好意的に受け入れていたようだ。親友のルチアに言わせると亡き夫の30年間より、アルフォンソの3年間の方が深い付き合いが出来た、とまで言う。
パオラRの70歳の誕生日に友人親戚の前で彼がいかに彼女にぞっこん恋をしているか、パオラRの料理の仕方、お花の生け方、彼女のあり方がどんなに好きかを晴れやかに語ったスピーチは友人たちの間で話題になった。私はその場にいなかったが、後でビデオを見せてもらった。
まるで初めて女性に恋をした青年の様だった。
そしてその三年後にアルフォンソも癌で呆気なく逝ってしまった。
アルフォンソの訃報を受け取りミラノでお葬式を挙げると聞いた時、正直「?!」と思った。何十年もローマに住んでいた人なら、ローマの方が圧倒的に友達は多いはずだ。
その小さな疑問は式中の妹のディアナの挨拶で解けた。
「人生で一番幸せな3年間を過ごしたミラノでお葬式をあげるのが兄のために最良だから。」と。
無宗教で執り行ったお葬式はアルフォンソとパオラRの写真のスライドをループで流しながらアルフォンソを惜しむスピーチが続いた。彼は彗星の様だったとか、贈り物だったとか皆が交代でしみじみと彼の存在の意味と人柄を語った。お葬式の形容詞としては不適切かもしれないけれど、素敵なお葬式だった。
パオラRの田舎の家にいると今でも妹のディアナから頻繁に電話がかかって来る。
今年75歳になるパオラRはアルフォンソを思い出しながら「もしもアルフォンソが長生きしていたら、あんなにメロメロな恋から醒めたかしら?」と言いながら、またスマイルの絵文字のようにニッコリと微笑む。
つづく。。。。
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