2024年3月22日金曜日

簡単!ヘルシー!レンツォさんのレシピ交換グループの湯煎イワシ



数年前の事、Facebookでシチリア料理のレシピ交換グループにレンツォさんという人から招待された。


そのレンツォさんという人を私は直接知らないし、料理のブログもまだ構想もなかった頃のこと。


料理は好きだがSNSのいわゆる食ネタ、特別でもない自分の目の前の食べ物をただ写真に撮った投稿はしない主義ないのに、なぜそんな招待を受けたのかも判らない。


知らない人からの招待は懐疑の目で見るのが普通だが、シチリア料理は少しエキゾチックで好きなので、試しに入会を承認してみた。


グループ内はプロのシェフも数人入っていたが、主にはシチリアの主婦が怒涛のようにレシピを投稿していて、そして伝統的なレシピでも自分の作り方と投稿者の作り方の違いに関するディスカッションで盛り上がっていて、その見解の違いなどを読むのもなかなか面白かった。


そして数ヶ月後に何の通達も、理由の説明もなくそのFacebookグループは閉じられてしまった。


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この湯煎イワシはその多数のレシピのうちの一つ。

このレシピを投稿していた本人に関しては生憎名前も覚えていない。


お魚を湯煎にかける。


という発想が全くなかったのでレシピを読んで目鱗。

試してみたら素晴らしい。


これはお魚の味をデリケートに活かす調理方法で、個人的には新鮮なお刺身で食べるのの次に美味しいと思う。


湯煎、つまり100度で加熱するので貴重なオメガ3も壊しません。


新鮮な魚で是非お試しください。


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<材料 二人分>


・イワシ 小20匹 捌く前の重さで250-300g程度


・レモン 1個


・イタリアンパセリ 少々


・エキストラバージンオリーブオイル


・塩



<作り方>



1・イワシは背骨を取って手開きします。


2・軽く粗塩を振り30分置き、塩を洗い流します。

*この工程は私が勝手に加えたもので、省略してもあまり変わりません。





3・サーブするお皿に皮の側を下にしてあまり重ならないように並べます。

  2の工程を外した場合はここで塩を振ります。


4・レモンの搾り汁を均等にかけます。イタリアンパセリの葉先も見た目良く散らします。


5・フライパンに水を入れ火に掛け、沸騰したら4のお皿を乗せ、蒸気がお皿の中に落ちないよう布巾をかけた蓋をし、魚に火が通るまで(約4、5分)沸騰を保ちます。




6・イワシが白くなって熱が通ったら出来上がり。

熱々をテーブルに運び、良質のエキストラバージンオリーブオイルを好みの量加えて頂きます。

*エキストラバージンオリーブオイルなくてもOK


*数人分作る時は大きめのオーブン皿を利用して、オーブンのトレーに湯を沸かし、湯煎にします。




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このレシピに関し長文を書く様な特別なエピソードがないのは、あまりお客様に出した事がないからなのですが、一度デニス夫妻と丁度ネパールから一時的に帰ってきていたジャコモを招待した時に出してみた。


2021年の12月で、まだ新型コロナで大勢の会食は避けていた時期のこと。


デニス夫妻と食事に呼び合う時は、どちらの家でも大勢の食事会である事が多く、あまり込み入った話はできなかったので、その日は少人数で色々話ができ、山の話でも盛り上がってその年の年越しはデニス夫妻とクネアツに行くことになった。


デニスの奥さんのキアラF.(2週間前のキアラはキアラM.で別人)はとてもお料理上手な上、小学校の先生だからか、教えてあげる、という感じではなく料理をしながらさらりと説明してくれたので、とても楽しく色々なレシピを教わる事ができたました。


その年越しのクネアツでキアラF.に教わったレシピはまた別途に投稿します。

2024年3月15日金曜日

シチリア風ポーク・ミートソースとクロちゃんと雲に隠れる夜半の月

久しぶりにクロちゃんがミラノに遊びに来るという。大学生の息子さんと一緒に。


息子さんと一緒?つまり若い男の子?いや食べ盛りの青年?それじゃ、お肉料理かな?と思ったら釣り好きでお魚も好きとのことでメニュー決定は更に迷走する。


色々何にしようかと考えた末、プリモは失敗がなくて、でもちょっと捻りのあるこのシチリア風ポーク・ミートソースにした。


困った時、迷った時にはこれ!というジョーカーのようなパスタ。


日本で一般的にミートソース、つまりイタリアでボローニャ風ラグーと呼ばれるソースは最低でも二時間煮込むと言われていて事前準備に時間がかかるのに比べ、このシチリア風ポーク・ミートソースは煮込み時間をレシピ本通りにしても20分。我流ではパスタを茹でる水の鍋を火にかけたと同時に野菜のみじん切りを始めても丁度パスタが茹で上がる頃に濃厚な味のソースが出来上がり、来客の時だけでなく一人のランチの時などにもササッと作れて便利で。


くろちゃん親子も気に入ってくれてレシピをブログに書く約束をしたので早速投稿します。


このレシピのオリジナルはカルメロ・サンマルコ(Carmelo Sammarco)著作の「シチリア的に料理すること」(Cucinare alla Siciliana )というレシピ本に掲載されている。でも、これも「マウロのミネストラ」同様、気が付かずに玉ねぎを抜かして、図らずも自分風にアレンジして我が家の定番になっている料理。分量はオリジナルではなく私のアレンジの分量にします。



本写真


「シチリア的に料理すること」(Cucinare alla Siciliana )は

イタリアAmazonで中古本で購入可能



ミラノの老舗書店ホエプリで買った1999年発行のこのレシピ本は通貨がまだユーロになる前の本で2万リラという定価が印刷されている。懐かしのリラ、0が沢山並ぶ。

ユーロに直すと10ユーロ程度だが、168ページフルカラーで内容も濃くかなりコストパフォーマンスの良いレシピ本で、掲載されている幾つかのレシピはその後頻繁に作ることになった。


南イタリアの庶民料理に多く見られるように揚げ物が多いが、揚げ物では重いかなと思った時は少量のオイルでオーブンで焼いて仕上げても良し。


著者のカルメロ・サンマルコ氏はシチリアの州都パレルモのシェフで料理の巨匠と言われる父親の下で修行をしたという。本の前書きには食材の産地などの説明とともにシチリア料理の豊かさやバラエティーの特殊さなどが丁寧に説明されている。


その中でも特に気に入っているのがこのシチリア風ポーク・ミートソース。


クロちゃんと雲に隠れる夜半の月のお話はレシピの後に。



<材料 二人分>


・パスタ 160g


・フェンネルシード   一掴み


・人参  中1本


・セロリ  1本


・豚肉生ソーセージ 160g  

*豚肉生ソーセージが入手困難であれば、豚ひき肉にたっぷりの塩胡椒をして1日以上冷蔵庫で休ませます。


・白ワイン調理用 1/2カップ


・濃縮トマトペースト  80-100g


・塩(パスタ茹で用)


・オリーブオイル


*オリジナルのレシピでは玉ねぎも入れますが私は入れません。

*オリジナルのレシピではリコッタを混ぜても良いと書かれていますが、実は試したことはありません。)



<作り方>



1・鍋にパスタ茹で用の水を火に掛けます。


2・にんじんとセロリをみじん切りにします。

*私は歯応えがあるくらいの荒めのみじん切りにするのが好き。


3・フライパンにオリーブオイルを敷いて、温まってきたらフェンネルシードを一掴み入れます。

*ちょっと多めかな、という程度で大丈夫。


4・フェンネルシードの下面が揚がってきたら2を加え弱火で4、5分炒めます。



5・4に豚肉生ソーセージ またはそれなりに下処理した豚ひき肉を加え、中火でしっかり炒めます。


6・5に火が通ったら調理用白ワインを注ぎ強火で蒸発させます。

*写真はちょっと入れすぎ。

でもワインを多めに入れるとスッキリした仕上がりになるのが好きなのです。



7・ワインに続けて濃縮トマトペーストも入れよく混ぜ合わせ、蓋をして煮込みます。


8・7が煮詰まってきたらパスタの茹で汁を少し加え、焦げ付かないようにパスタが茹で上がるまで煮込みます。


9・パスタが茹で上がったら8とまぜ、熱々をサーブします。



10・好みでパルメザンチーズをかけて頂きます。





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クロちゃんと雲に隠れる夜半の月


先週木曜のお客様のクロちゃんと知り合ったのは1990年代前半のミラノ。

彼女は日本の大手百貨店の駐在員だった。現地採用ではない駐在派遣員。


当時デザイン事務所で下積み中、安月給でボロアパートに住んでいた私と比べると、ミラノの中心部のドーモ広場に程近いイタリア大通りにバスタブの他にシャワーパンも別途あるような立派なブルジョワ向けアパートに住んでいたクロちゃんは表面上ちょっと身分違いに見えたけれど、本人はいたって気さくでキュートな女性だった。


日本企業が多くの駐在員を海外に派遣していた時代。

が、よく考えると35年のミラノ生活で日本企業の「駐在員と友達付き合い」をしたのは後にも先にも彼女一人。


東京外語大イタリア語科卒の才媛、、、だったはず、とブログに嘘は書いてはいけないと一応確認のため今調べてみたら、なんと、東京外国語大学 大学院地域文化研究科博士前期課程修了だと、今知った。知り合って30年以上博士課程まで終了していたとは知らないでいた。

つまりそのくらい学歴を鼻に掛けたりしない人。


美術大学入学以降、美術系、デザイン系ばかり、頑張って交際範囲を広げても建築系の人たちが入る程度の偏った人付き合いをしていた。ミラノに移ってからはオペラの勉強などできている音楽系の人も友達のレパートリーに入ったが、それでも芸術系であることには変わらない。そんな中でクロちゃんはなかなかユニークで新鮮な存在だった。


その後赴任期間が終了した彼女は日本に帰国し、結婚したそうだ、しばらくして、子供が生まれたそうだ、と伝え聞いていた。

多くの子供を持った女性友達がそうであるように、育児が大変で子供が小さい時は疎遠になりがちで、成長、独立すると付き合いが復活する。


現在は日本の大学でイタリア語を教えながら「イタリアユダヤ学」に関する学術研究をしている。


そう、その学術研究テーマのために先週も書いたような、現在のイスラエルとパレスチナの戦争や、マスメディアではあまり焦点の当てられない世俗的(宗教に熱心でないという意味でこう訳すのが一般的だけれど、現世的、と呼んだほうがしっくり来ると思う。)イスラエル人のことなども、ここ数週間悶々としていたことをあれこれ話せて嬉しかった。こういう話題で突っ込んだ話の出来る人は少ない。


さらに、あつかましく持って来てもらうように頼んだ実家に届いた書類や日本での買い物など諸々の物と一緒に、彼女の気使いで持ってきてくれた本が「砂漠の林檎 イスラエル短編傑作集」それもまた何とタイムリーなチョイスなのだろう。一週間で七分ほど読んだが、どれも興味深く、イスラエル文化を掘り下げられて感謝。



「砂漠の林檎 イスラエル短編傑作集」



何年経っても、日頃のベースに距離があっても何のギャップもなく飽きずに延々と話は続く、イスラエルの戦争やユダヤ人の事から始まって、何のきっかけか日本の古典文学にまで話は至った。


時差ぼけがまだあるかしらと早めに始めた夕食も長引いて、名残り惜しくも夜半近くにクロちゃんと息子さんが帰ってしまってから、紫式部の和歌が頭に浮かんだ。



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めぐりあひて見しやそれともわかぬまに

   雲隠れにし夜半の月かな


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私の記憶に間違えがなければ、百人一首の中で唯一友情を描いた歌。