2024年2月23日金曜日

地球物理学博士ニーマのフェルニのヴィーガンアレンジとイラン旅行のきっかけ


来週来客の予定なので食後のデザートを何にしようかと迷った末、とりあえず昨年末ニーマに教わったイランのデザート、フェルニが上手に出来るか試作してみました。


伝統的なフェルニは牛乳と白いお砂糖を使うので白く仕上がります。が、うちに常備している豆乳を使いコクを出すために全糖を使ったので茶色く仕上がっています。

常備している豆乳で作ると自ずとヴィーガン・アレンジになります。牛乳でも豆乳でも美味しいので、オリジナルとヴィーガンアレンジの両方の材料を記載します。


作り方は同じです。


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ニーマはパオラの長女サラのパートナーでイランのカスピ海に近い地方の出身。イランは地震国なので地震学専門の地球物理学を専攻したが、現在はAI関連の仕事をしている。

そんなに簡単に地震学からAIの仕事に移れるのかと質問したら、データの解析という意味ではあまり大きな差はないのだという。。。なるほど。。。

一方サラは地球温暖化下の農業を研究する。二人ともドイツのベルリンで博士号を取った秀才カップル。でもエリートっぽい気取りは全くなく、周りの人に優しく、さらに二人ともスポーティブでとても素敵な若者達だ。


料理をするとリラックスするというニーマはクネアツの山の家にいる間頻繁に台所に立っていた。

イラン料理だけでなくサラと一緒にピザまで作った。彼の作ったものはどれも美味しかったけれど、中にはイラン料理で決め手の食材がミラノで見つからないものもある。


この牛乳とお米の粉と砂糖とローズ水で作るフェルニは甘味控えめな上品なお菓子で、白いクリーム状のものをカップに注ぎ、固まった後それをキャンパスとして色々デコレーション出来るところは作る側も見る側も楽しめます。


シナモン、ピスタチオなどで飾るのが一般的ですが、今回は春の到来を告げるお花の一つ、野生のすみれの花が丁度バルコニーに咲いたので飾りに使ってみました。


今回使った野生のスミレは一昨年種も植えないのにバルコニーのトピナンブールの鉢から生えてきたのを別の植木鉢に移して大きくしたもの。



バルコニーのスミレ


野生のすみれの花は沢山採れればハーブティーやジャムに加工することも可能で食用に出来るそうだか、こんな小さな花をジャムにするにはかなり広い庭一面野生のすみれが咲いてる場所を見つけなければならない。


イラン旅行のきっかけの話はレシピの後に


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<オリジナル・レシピ材料 2人分>


・牛乳  300ml


・上新粉 大さじ山盛り 2


・砂糖 大さじ山盛り 2

*ちなみにイタリアには上白糖はないので白いグラニュー糖を使っていました。


・ローズ水 大さじ2

*フェル二はアフガニスタンでも作られるデザートですが、一般的にローズ水のかわりにカルダモンの粉末、または両方入れるレシピもあるようです。イランでもカスピ海地方ではローズ水だけを使うようです。


・飾り付け用シナモンパウダー




ヴィーガンアレンジ材料写真


<ヴィーガンアレンジ・レシピ材料 2人分>  写真はこちらです。


・豆乳  300ml


・上新粉 大さじ山盛り 2


・全粒糖 大さじ山盛り 2

*豆乳だと牛乳に比べコクに欠けると想像し、コク補うためにこちらで全粒糖と呼ばれる三温糖と黒砂糖の中間のような砂糖を利用しました。「味」を優先したのでお砂糖の色で真っ白ではなくやや茶色っぽい仕上がりになっています。伝統的なフェルニらしく白く仕上げたい場合は上白糖かグラニュー糖を使ってください。


・ローズ水 大さじ2


・飾り付け用シナモンパウダー + 野生のスミレの花(今回のみ)






<作り方>




1・鍋に牛乳または豆乳を温めます。


2・ふるいを使ってダマにならないように上新粉を徐々に振り入れます。


3・お砂糖も混ぜ込みます。




4・3をとろ火で鍋の底が焦げつかないよう25分程かき混ぜながら上新粉に火を通します。

*ニーマは時間を計っていなかった。上新粉に火を通すだけなら15分で十分なはずだが、ネットでいろいろなレシピを見ると皆25分と書いているので、それに従います。


5・全体に粘り気が出てきたら・ローズ水を加え全体に更によく馴染ませ、人数分の器に盛り付けます。

*ネットで他の人のレシピも見てみたら、香りとしてはイランでもアフガニスタンででもカルダモンを数個、粉状にした物を加える人も多いようです。ローズ水だけというのは特にカスピ海地方風のようです。



6・冷蔵庫で数時間(半日程度)寝かせ冷やします。





7・サーブする前にシナモンパウダーやピスタチオなどで飾り付けてテーブルに運びます。

 ・今回の飾り付けは野生のスミレの花とシナモンパウダーを利用しました。




完成写真

折角のイラン料理なのでアールデコ期のバカラのグラスで

イスパハンというペルシャの古都の名が付いているシリーズのクープグラスに盛ってみました。

http://galleria-kajorica.blogspot.com/2015/05/baccarat-ispahan.html



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イラン旅行のきっかけ


サラとニーマが初対面の時「ウチの母はイランに行ったことがあるの。」というのが二人が近ずける要因の一つになったのではないかと勝手に想像している。


二人の出会いの2年前にパオラとイラン旅行をした。


パオラが「ギュンター(亡きパートナー)との次の旅行はイランのはずだった。」と言った時、即座に「だったら一緒に行かない?」と誘った。私にしては珍しい。旅行の相棒選びには普通はとても慎重なのに。彼女はその時は考え込んでいたが、1週間後「きっとあなたとならいい旅行ができると思う。」と電話してきた。


旅行の仕方の似ている人を見つけるのは案外難しい。似たような旅の仕方で、同じ時期に休みが取れて、同じくらいの予算が組めて、同じ行先に似たような興味が持てる人というのは極めて少ない。


イランは数年前から是非行きたいと思っていた国だったが、西欧のマスコミはかなりアメリカ寄りだから敵国イランのニュースとなるとかなり否定的な話し方をするので、イランの一般的なイメージはあまり良くない。アメリカや西欧諸国の対イラン経済制裁のせいで宿のネット予約は不可能、クレジットカードも通用しない。情報が少なすぎて何が起こるのかわからない、と色々躊躇する理由が多かったので珍しく即実行に移していなかった。


けれど、決して文化レベルの低い国ではないことは想像出来た。


元々イランに旅行したいと思ったのはその数年前、イタリア、モデナの出版社と文房具のデザインの仕事をした際に、せっかく絵本で有名な出版社とコンタクトがあるのだから子供向け絵本を提案してみるのもどうだろうと、国際的に有名なボローニャのチルドレンズ・ブック・フェアを視察した際のこと。

https://iicosaka.esteri.it/ja/gli_eventi/calendario/bologna-children-s-book-fair-illustration_0-2/


ボローニャのチルドレンズ・ブック・フェアは世界最大規模の子供向けの本のトレードフェア。

とても面白いフェアだった。

仕事柄、また仕事の分野が広かったこともあり西欧の様々な分野のトレードフェアを見るのに年間で30日以上費やしていた時期もあったが、これほど驚いたフェアは他にない。


まるで世界各国の文化の縮図を見るかのようだった。


子供向けの本には、その国が、その国の人たちが、どんな教育を自分たちの子供に与えたいかというのが如実に映し出される。


ヨーロッパの子供向けの本はお国柄で違いはあっても往往にしてレベルが高い。日本の本も決して悪くはないが、なーんとなくオブラートをかけてぼやかしている印象が否めない。


ネガティブに驚いたのはアメリカとサウジアラビヤ。サウジアラビアの本は「この国に文化はあるのか?」と思うレベルだった。アメリカの本は酷かった、アニメなどのキャラクターの本ばかり、最悪のマーケティングだ。こんな本を見て育った子供はブランドのマークがついていないと良いとわからない大人に育つのだろう。

もちろんアメリカにもいい出版社はあるはずだ。その時私の目に留まらなかったか、フェアに出展していなかっただけかも知れない。むしろ、そう思いたい。


ポジティブに驚いたのは(単にそれまで私が無知だっただけだが)韓国の本のクオリティー。当時(約15年前)西欧で日本企業を凌ぎ始めていた韓国企業の国際的活躍や、韓国映画、韓国ドラマの質の高さも、子供向けの本を見てとても納得した。

韓国と並んで驚いたのがイランの本の「シリアス」さ。対子供でもレベルダウンしない、まるで大人に向けたような本だった。文字は読めないので今から考えれば宗教的な本だったのかもしれないが、私がそのフェアで見たアメリカの本とは極めて対照的で、この国の文化はもっと掘り下げる必要があると強く思った。

アラブ人とペルシャ人の区別もしていなかったほど中近東文化に無知だった頃の事。


そんなこんなで2016年の夏休みはイランに行くことになった。

旅行は期待以上だった。


今後もまたニーマに教わったイラン料理のレシピを投稿することがあると思うのでイランの話は今回はこの辺で。


2016年のイラン旅行の写真を少し掲載します。




古都シーラーズのナシーロル・モルク・ムスク(Nasir al-Mulk Mosque)



同じく古都シーラーズの詩人サアディーの墓はまるで巡礼地のような人混み

イラン人の詩への情熱と詩人への敬意は深い。

出発前にテヘランの通りの名前や地名を自動翻訳していたら、大半はイマーム、殉教者、詩人の名前だったので出発前にハフェツの詩集を買って出かけたが、詩、詩人への熱は想像以上だった。




最も繁栄した時期は「世界の半分」があると言われたイスパハン。巨大なイマーム広場は日が暮れると夕涼みがてらイブニング・ピクニックをする人で埋まる。イラン人ほどピクニックの好きな国民を他に知らない。




イスパハンのモスクと宮殿内部

目が覚めるほど美しい。




二つの砂漠の交わるところのオアシス都市ヤズド。三千年の歴史を持つ。

カナートと呼ばれる地下水路網が充実している。

多数見られる塔は風を取り込み、山から引いた冷たい地下水路の通る

地下階まで風を送り込み建物全体を冷房するシステム。



トルコ国境近くのウルミエ湖。当初の予定になかったゾーンだが
飛行機からピンク色の湖を見て「あそこに行きたい」と旅行日程を大変更。

ビーチは砂ではなく塩だった。

肌を露出しないよう洋服を着たまま水浴をする女性二人。