2024年5月31日金曜日

イタリア食材・オルティコラで見つけた珍しいバジリコ達と伝来の歴史

四週連続で創作大賞、レシピ部門に応募してしまいましたが今週はお休みし、今回はバジリコ(イタリア語)バジル(英語)のヴァリエーションのご紹介。


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イタリア国旗のトリコロール、緑、白、赤は、バジリコ、スパゲッティ、トマトという意味だと言われるくらい(もちろん食を重んじる国民を茶化す冗談で言われます。本当は緑=国土、白=雪・正義・平和、赤=愛国者の血・熱血という意味)イタリア料理に欠かせない香草ですが、原産はアジアの熱帯地方やインド周辺とのことです。


イタリア、ギリシャに伝わったのは紀元前350年頃のアレクサンダー大王の時代、英国やアメリカ大陸に伝わったのはそれよりだいぶ遅く16世紀ごろと言われています。まあ、アメリカ大陸発見が15世紀末ですから、その後まもなく伝わったということになります。

イタリア、ギリシャに伝わったのもアジアとヨーロッパ間であまり行き来のなかった時代なので、アレクサンダー大王がインド遠征で持ち帰りヨーロッパに伝わったという説は信憑性があります。


現代語ではイタリア語でバジリコ、英語でバジル。

ちなみに古代ギリシャ語では「バジリコン」。古代ローマの言葉ラテン語では「バジリクム」と呼び学名はオチムム・バジリクム(Ocimum basilicum)。


今では品種改良も重ねられイタリア各地方オリジナルの品種も多くあります。


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先々週毎年五月にミラノ中心部のモンタネッリ公園で開催される「オルティコラ」と呼ばれる植木の展示販売があり(表紙写真)、イタリア全国から植木屋さんが集まるので、探している珍しい植物を探しに行き、お目当ての植木は見つからなかったのですが、珍しい香草専門の出展者が2、3件あり様々な香草の写真が撮れたので、その他の資料と合わせて今回は特にバジリコの変種をご紹介したいと思います。


セージ、タイムなども珍しい品種が多数種類あったのですが、その多くが聞きなれない英語名がついていて馴染めなかったので割愛します。

意外と品種の少ないのがパセリ系でした。




1・バジリコ コムーネ

(一般的バジリコ)の意。最も一般的なバジリコ。どこででも売っています。

見た目は2のジェノヴェーゼと見分けるのは難しいくらい似ています。



2・バジリコ ジェノヴェーゼ

ジェノヴェーゼと呼ばれるジェノバ種 クラッシコ(古典種)と呼ばれます。

1のバジリコ コムーネよりさらに香りが強い。

*有名なペースト・ジェノヴェーゼにも使うのはこれがベストです。




3・バジリコ ナポレターノ

見た目葉っぱがイレギュラーなナポリ種。



4・バジリコ シチリアーノ

葉の小さなシチリア種。

バジリクム・ミニムムと呼ばれるのと同じような感じです(要確認)


5・バジリコ モンターナ

葉先の尖った山岳種






6・バジリコ アフリカーノ

ちょっと大葉に似てる(もっと小さいですが)アフリカ種



7・バジリコ アルティコ

北極種、という意味ですが北極で取れるなんてことがあるのでしょうか???



8・バジリコ グレコ

ギリシャ種、シチリア種に似ています。

もしかしたらギリシャから南イタリアのシチリアに渡り、北上しながら姿を変え、今の意一般的バジリコになったのでは、というのは私の勝手な想像です。



9・バジリコ タイ

タイ種


10・他にメキシコ種が複数あるはずですが画像が見つかりませんでした。


以上は土地のヴァリエーション

11から14までは風味が特殊なもの


11・バジリコ カンネッラ

シナモン風味のバジリコ



12・バジリコ ぺぺ・ヴェルデ

グリーンペッパー風味のバジリコ



13・バジリコ リクリツィア

甘草風味のバジリコ



14・バジリコ・リモーネ

レモン風味のバジリコ


15・バジリコ・ロッソ・ルビンまたはバジリコ・ビオラ

紫色のバジリコ



16・フォリア・ロッサ

赤葉バジリコ




17・ワイルドマジック

初めて聞きました。どこの変種でしょうか?






2024年5月24日金曜日

サンレモ風カボチャの花(ズッキーニの花)の詰め物とミラノ・ピアノ・シティーとイブニング・ピクニック

先々週とその前の週に野の花を摘んできて食べる話とレシピを書きましたが、今週はメルシェで売っている花のお料理です。


カボチャの花、日本ではまだかなり高値のようですが、きっとその他の外来野菜のように、そのうちこなれた値段になることを祈りつつ、この季節の大好きな料理のレシピをご紹介します。


カボチャの花の詰め物にはモッツァレラ・チーズとアンチョビを詰めて揚げたもの、リコッタチーズなどを詰めたものなどイタリア全国で様々なヴァリエーションがありますが、この食べ方がカボチャの花のデリケートな風味を活かし最も美味しいと思っています。


音楽祭と切り花の産地として知られるサンレモの郷土料理です。

サンレモは北イタリアリグーリア州、長靴の左上。そのままさらに西に向かえばフランスのコート・ダジュールに至ります、と言えばなんとなくわかるでしょうか。


タイトルに「カボチャの花」と書きましたが今回の写真はズッキーニの花で作っています。



日本語で読むとカボチャとズッキーニではずいぶん違うと思われるかもしれませんが、イタリア語では、カボチャはズッカと呼び、ズッキーニというのは「小さいカボチャ」という意味なのです。


花は非常に似ていて、ズッキーニがくっついていなければ、判断は難しい程。

専門家によると、カボチャの花の方がやや小さめで香りが強いそうです。


イタリアで呼ぶ時はカボチャの花(フィオーリ・ディ・ズッカ)の方がズッキーニの花(フィオーリ・ディ・ズッキーニ)より短く言葉の音が綺麗なのでズッキーニの花のこともフィオーリ・ディ・ズッカ=カボチャの花と呼んでしまうのが一般的です。


この料理を習得したのは30年近く前、ラ・クチーナ・イタリアーナという料理雑誌の郷土料理紹介の記事でした。雑誌上の材料の分量詳細は記憶していません。


味も良く、見栄えも華やか、コストパフォーマンスも良く(花が安く入手できれば、ですが)、評判も至極良いので、カボチャの花の季節には機会がある毎に作ります。持ち運びも楽なので自宅ディナーだけでなく、持ち寄りパーティーやピクニックにも最適です。


先週末友人達と行ったミラノ・ピアノ・シティーというイヴェントでも作り、友人達とピアノコンサートを聴きながら芝生の上でイブニング・ピクニックをしました。ミラノ・ピアノ・シティーのことはレシピの後に。




<材料> 12個分(4-6人分)


・カボチャの花  12個


・ジャガイモ 700g


・卵 1個


・パルメザンチーズ 50g 詰め物用 +  10g トッピング用


・バジリコ 1束


・塩


・胡椒


・オリーブオイル


*記憶に間違えがなければラ・クチーナ・イタリアーナ誌ではバジリコの他にイタリアンパセリとニンニクも詰め物の材料として書かれていたと思います。が、無しの方がデリケートに仕上がるので、いつも省略しています。




<作り方>


1・じゃがいもは皮を剥かず丸ごと、半分水を入れた深皿に入れ、ラップなどで覆って電子レンジで柔らかくなるまで火を通します。(大きめだったので500wで18分かかりました。)

*もちろん、茹でてもOKです。必ず火を通してから皮を剥くこと。


2・カボチャの花は洗い、花を広げてめしべを取っておきます。


3・小さなズッキーニがついてる花を使う場合、花の反対側のザラザラしている先端は切り落とします。ズッキーニの太さにより蛸ソーセージのように切り目を入れます。

*普通は花はズッキーニから離して料理するのですが、ズッキーニがついている方が可愛いので私はつけたままにします。



4・バジリコは洗い、葉の部分のみをざく切りにします。

*みじん切りにまでする必要はありません。




5・パルメザンチーズが塊の場合、おろしておきます。


6・じゃがいもが柔らかくなったら皮を剥き、全体をフォークで潰します。

*マッシュポテト、というほど滑らかにしなくても、概ねほぐれればOK。


7・6に4、5を加え、卵を割り入れ、塩胡椒で味を整えよく混ぜます。

*慣れない場合は卵を割り入れるのを最後にし、卵を入れる前に塩加減を味見すれば失敗0で作れます。


8・2に7を詰めていきます。最後に軽く握って花の形を整えます。


9・オーブン皿を使う場合は、オーブン皿全体にオリーブオイルを塗り花を並べていきます。

*オーブンペーパを使う場合は不要。

*開けた時に花が割れてしまったり、初めから一部壊れている場合はその部分を下に向けて置いていきます。下向けで焼くと、壊れているのがわからなくなるので。


10・並べ終えたらオリーブオイルを軽く回しがけし、トッピングのパルメザンチーズを散らしオーブンに入れます。


11・180度のオーブンで火が通るまで焼きます。

*楊枝か竹串を刺して何もついてこなくなったら出来上がり。

*うちの古いオーブンはファン(送風)モードにすると事前に温めずに焼けるので、25分でしたが、事前に温めたオーブンなら20分くらいでも大丈夫かもしれません。

焼き上がり



家で食べるのならこんな盛り付けかな。


銘々皿では。。。



お花の部分だけなら初めからオーブン皿に入れて焼くのもいいですね。


今回はピクニックなので日本で買った優れモノ、工房アイザワのお弁当箱に。

イタリア人に見せると皆口を揃えて「こういうお弁当箱欲しい。」と言います。

日本の良い物、どんどん海外進出して欲しいですね。



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ミラノ・ピアノ・シティーとイブニング・ピクニック


イヴェントの多い町ミラノの数ある年中行事の中で毎年最も楽しみにしているものの一つがピアノ・シティー。今年も先週末開催されました。


2011年に始まった音楽フェスティバルで、クラッシック、ジャズ、エレクトロニック、ポップ、ロックなど、あらゆる分野の音楽のピアノコンサートが金、土、日の3日間に早朝から夜中まで300以上あり、中には世界的なビッグネームのピアニストもいるのに全て入場無料、当然のことながら凄い人出になります。好天候に恵まれた年は会場から会場へと移動する人達がまさに「人の川のように」(イタリア語的表現)街に溢れます。


以前この企画を立ち上げた女性のレクチャーを聞きに行ったことがありますが、ミラノ生まれでアメリカでキャリアを積んだ敏腕女性。


アメリカの消費主義一辺倒の「買って買って!食べて食べて!」的なお金中心の社会が嫌になってイタリアに帰国したとのことでした。


この大規模なカルチャーイヴェントの経費の大半はスポンサーによって支えられているのだと想像しますが、13年間ずっと入場無料を保ってきたのは素晴らしいと思います。


よく考えると高いチケットを払う余裕のある人達だけが美術や音楽などの芸術を楽しめる、という社会に少し疑問も感じます。

イタリアでは普段ミュージアムに行かないような広範囲の人達も気軽に芸術に触れる機会を作るために、月1回日曜、公立美術館、博物館の入場も無料になります。


ピアノ・シティー開催時期は毎年5月の中旬から下旬の爽やかな季節。屋外コンサートも多いので、天気予報の出始める2週間前から毎日ピアノ・シティーのある週末の天気を心配しながらチェックすることになります。


もちろん、庭園野外コンサートだけでなく、美術館、博物館、図書館、大学、病院、ホテル、競馬場や個人宅まで、この機会にしか入れない場所でのコンサートもあり、以前には走るトラム(路面電車)の中でのコンサートもありました。


特に好きなのはモダンアート美術館の庭園の中に作られるメインステージ。この庭園は普通は子供連れでないと入れないのですが、この時期だけは大人だけでも入れます。


広い芝生にリラックスして座り込み、ピクニック気分で食べたり飲んだりしながらメジャーピアニストのコンサートが楽しめるのです。


メインステージの土曜の夜は19時からクラッシック、20時からエレクトロニック・ミュージック、21時からジャズ、23時から再びクラッシックというプログラムで、当然友人達と集合してコンサート&イブニング・ピクニックを楽しみました。生憎途中から雨に降られてしまいましたが。。。


会場内ではビールを売る屋台などもあり飲んだり食べたりは可なのですが、数年前ガラス製品は割れた際に危険という安全上の理由で持ち込めなくなりワインボトルを取り上げられ、その後はステンレスの水筒の中に冷えた白ワインを詰めて持ち込んでいます。


おつまみは、軽いスナックなどの他に2回連続でこのサンレモ風カボチャの花の詰め物を作り今回も好評でした。



今年のメインステージのオープニングは異例で映画上映。故坂本龍一の最後のコンサート映画、こちらではまだロードショー公開されていない「Opus」でした。




若干19歳、素晴らしい盲目のピアニスト、

フリーダ・ボッラーニ・マゴーニ(Frida Bollani Magoni) は

大人気で入場できない人も大勢。



土曜の夜のメインステージ。

エレクトロニックミュージックのドイツ人キーボーダー

モーリッツ・ファスベンダー (Moritz Fasbender)こと、

フリーデリケ・ベルンハルト (Friederike Bernhardt)

彼女はいくつも芸名を持っているとか。



日曜の午後の庭園コンサート

日頃スカラ座で活躍されている在ミラノの吉川隆弘さんの演奏は

小鳥の囀りの伴奏付きでした。



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